ポストドクトラルフェロー

The Reischauer Institute Postdoctoral Fellowships in Japanese Studies provide recent graduates with the opportunity to continue their doctoral research at Harvard and produce publishable work from their dissertations. The fellows participate in the Japanese studies community at Harvard, work with faculty and students, and present their research in the Japan Forum series at some point during their stay.

The RIJS Postdoctoral Fellows for the 2018-19 academic year are as follows:

マイケル・アベレ(博士号:2018年イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校日本史専攻)

Abele2009年、ミシガン州大学より学士号を取得。2018年、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校にて博士号を取得。主に近世・近代の日本史について研究をする。2014年〜2016年、客員研究員として大阪市立大学に在籍。

博士論文「百姓・かわた・死牛―1600年〜1890年の西日本における在地社会の変容」では、江戸時代初期から19世紀後半にかけての所有権の変容について分析し、日本における資本主義の発達を考察する。近世のかわた(賎民)村における皮革確保の為の 権利に注目し、身分に基づいた所有権が19世紀半ばまでに私的所有権へと変化していった過程を考察する。賎民社会の考察を通して、身分による所有権、また社会的組織が下層階級から崩壊し、明治以前の私的所有権という資本主義概念に発達した流れを明らかにする。

エドウィン・O・ライシャワー日本研究所では博士論文の出版に向けて加筆修正を行う。さらに20世紀初頭に都市部へと移住した農村出身の部落の人々の体験に関する研究を進める。

mabele@fas.harvard.edu

ジュリア・アレクセーバ(博士号:2017年ハーバード大学比較文学専攻)

Alekseyeva2017年ハーバード大学比較文学部より映像・視覚学部門で博士号を取得。研究内容はグローバルメディアと急進左派政治の相互関係。日本メディア(映画、漫画等)を中心に、比較的な視点からフランスと旧ソ連における理論、芸術、映画の歴史の研究も行う。2年間ブルックリン大学及びブルックリン大学院にて映画学を教えた。

研究論文「映画眼と映画バヨネット:日本、フランス、ソ連のアヴァンギャルドドキュメンタリー」では、1920年代のソ連から1960年代のフランス及び日本における政治映画、実験映画の制作を分析する。ここでは、左派のアヴァンギャルドドキュメンタリーが一様に似通っているとは言えない点を論じる。作品の中には政治的メッセージを端的に伝えることを目的としたものがある一方、人間の知覚、自由、感情を強調するものもある。これは、1960年代のフランス、日本へ引き継がれ、 フランスのジガ・ヴェルトフ集団は映画を政治・自己改革のための手段とした。同じ頃、日本では松本俊夫や羽仁進が衝撃的かつ遊び心溢れる美学でもって、観る者を解放し、急進化した。本研究では、解放を強調し、遊びや感情、形式主義からの離脱を特徴とする政治的前衛芸術を考察する。

エドウィン・O・ライシャワー日本研究所では、研究論文を加筆修正し出版する。仮題:『Cinema-Truth and its Discontents: Critiques of Documentary in the Japanese and French 1960s』。また、1960年代の国際政治活動家によるメディアに関する資料収集を行い、日本の映画やメディアの歴史に関する記事を書いている。

学術研究以外に、受賞歴のあるノンフィクション漫画「ソ連の娘:グラフィック革命」を2017年に出版。国際的な映画とメディアの歴史に関して、論文及び漫画の形式で The Journal of Japanese and Korean Cinemathe NibCine-FilesJewish CurrentsThe Paper Brigadeなどで著作を発表している。

aleksey@fas.harvard.edu

ロバート・ヘグウッド(博士号:2018年ペンシルバニア大学日本近代史専攻)

Hegwood2018年、ペンシルベニア大学にて博士号取得。主に1870年代〜1960年代における日系移民、貿易関係、文化外交について専攻。米国のアーカイブを用いた調査を行い、また東京大学にて客員研究員としてリサーチを行う。

博士論文「Transnational Foundations for Growth: Migrant Brokers and Japan’s Rise as a World Power, 1868-1964」では、日米間の商業及び文化交流の媒介者として日系移民が果たした役割を考察。ここでは、移住者及び物資の流動性と太平洋を渡った日本のイメージ向上の関係を分析している。日本人が渡米・定住する中で国境を超えた社会的ネットワークを築きあげ、それが米国における日本の商業及び外交の社会的基盤となった。欧米の消費者からの日本のイメージを築き上げるために尽力した日本の貿易関係者と仲介者である日系移民の努力を知る場所として、見本市や居住地また船舶などの物理的な空間を研究に用いる。現代の世界における日本の役割を理解するには、太平洋を渡った日系移民の移住の歴史を知ることが不可欠であると考える。

エドウィン・O・ライシャワー日本研究所では、博士論文の出版準備を進めると同時に、論文の執筆も行う。1つ目は日系移民の戦後復興における世界的貿易のネットワークについて、2つ目は1939年〜1940年にかけてサンフランシスコで開催されたゴールデンゲート国際博覧会における日本館への日系移民の支援を考察する。

rhegwood@fas.harvard.edu

ホフマン黒田 理沙(博士号:2018年カリフォルニア大学バークレー校近代日本文学専攻)

Hofmann-Kurodaホフマン・黒田理沙は19世紀から現代に至る日本文学及び日系ディアスポラ文学を研究しており、科学史、クィア理論、トランスナショナリズム、批判的人種理論にも関心を持っている。2017年、国際交流基金より奨学金を得て東京の早稲田大学で研究を行い、2018年にカリフォルニア大学バークレー校より博士号を取得。

博士論文、「生命の木:明治日本における親族関係の概念」(「The Tree of Life: the Politics of Kinship in Meiji Japan」) では、日本の明治大正時代における「親族関係」の概念を考察する。特に夏目漱石や小泉八雲など、国境を超えて著作活動を行った作家の作品を通じて文化的、科学的、そして文学的な角度から「親族関係」の様々な意味を考える。19世紀後半から20世紀前半にかけて、日本は帝国主義の拡大に伴い、民族主義のイデオロギーを正当化するために、血族関係の概念をますます重視する様になった。この歴史的背景において、これらの作家は「親族関係」という概念に、より広い意味を与えようとした。彼らは国家や民族を超えて著作活動をしたが故に、国家社会により半ば強要されていた「血縁関係」 という言葉の本質的な意味を批判しようとしたのではないか。本論文では二人の作家が時代に反し、 進化論、優生学から帝国時代の人類学、民俗学、更に合成写真に至るまで、あらゆる資料を駆使することにより、いかに文学における新しい「親族関係」の意味を築いていったかを示そうと試みる。

ライシャワー日本研究所では本論文を出版に向けて編集し、更に夏目漱石の「こころ」のテクストに現れる「血」のレトリックに関する記事も出版する予定である。今後は研究の範囲を20世紀後半〜21世紀前半まで広げ、安倍政権の掲げる近年の新自由主義パラダイムと強調される「家族観」が、中島京子や鹿島田真希らなどの現代日本人作家がフィクションの中で描く家族関係へ与える影響を考察する。

lhkuroda@fas.harvard.edu

石田真理(博士号:2016年カリフォルニア大学ロサンゼルス校近代日本文学文化専攻)

Ishida2016年、UCLAアジア言語文化学部博士課程修了。近代日本文学文化専攻。2016年秋学期~2018年春学期、UCLA非常勤講師。2013年~2014年、一橋大学大学院言語社会研究科特別研究学生。

研究テーマは、文学と帝国主義の関係性の考察。博士学位論文「帝国文学:大日本帝国における言語、身体、他者」は、文学が担う矛盾した役割に焦点を当てながら、日本語(国語)で書かれた日本帝国の文学テクストにおいて、1920年代から40年代にわたって多民族帝国というイデオロギー的世界観がいかに(再)生産されたかを考察した。特に、実践と制度としての文学、言語帝国主義、植民地主義の暴力と権力のメカニズム、人種化の過程の関係性を明らかにすることによって、「読む」という行為を脱植民地的な実践として提示した。

ライシャワー日本研究所では、出版に向けて博士学位論文に加筆修正を行う。生政治による人種化と帝国文学の関係性を引き続き考察するとともに、連合国軍占領期における戦争と帝国の記憶に関する言説と文学をめぐる言説のリサーチに取り組む。

mishida@fas.harvard.edu

アンナ・スカルペリス(博士号:2018年ニューヨーク大学社会学専攻)

Skarpelis人種、移民、社会学理論を専門とする歴史比較社会学者。国家主導の人種及び民族的分類と、特に20世紀日本とドイツの単一民族主権における帰化事業について研究。混合研究法により、多言語での植民地及び戦争に関するアーカイブを用い、急激な政権移行、強制移住、地政学的混乱における人種的差異及び同化の構造について考察する。博士論文は日本財団及び本庄国際奨学財団、ニューヨーク大学より助成を受けた。

主に、人種及び民族論、比較歴史認識論、また翻訳による文化社会学的影響を特に意味づけの分析に注目しつつ研究している。その他、移民、社会学理論、政治社会学、科学史についても関心を持っている。ニューヨーク大学以前には、社会学研究者としてWolfgang Streeckとともに4年間マックス・プランク研究所にて研究に従事。他に、定量・計算分析により、社会学者の文化という概念の取り扱いについて、Paul DiMaggioとともに研究。横断的及び縦断的に、福祉国家における人種化形態について考察する。

エドウィン・O・ライシャワー日本研究所では、Japan Digital Scholarship LibrarianのKatherine Matsuuraとともに様々なデジタルプロジェクトに取り組む予定。また、次のプロジェクトとして計算法を用い、20世紀の日本の福祉国家として発展の中での人種化について、オリジナル・データセットを考案する。

askarpelis@fas.harvard.edu